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about THE NORTH FACE

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Creative Ideas for Moving

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about
THE NORTH FACE

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Creative Ideas for Moving

ブランドを前進させる、
クリエイティブのアイデア

ヘリテージアイテムから、コラボレーション、マタニティ、イノベーティブな技術など、あらゆるテーマに沿ったコミュニケーションが求められるThe North Faceのクリエイティブ。ブランドが築いてきた不変的なコンセプトを大切にしながらも、時代に合わせて進化し続けるプロダクトを理解し、新鮮なブランディングやプロモーションのアイディアを生み出すのがクリエイティブディレクターの仕事だ。これまで、ブランドとともにさまざまなキャンペーンを手がけてきた原田貴章に話を聞いた。

ブランドらしい“リペア”の在り方を表現する。
THE NORTH FACE Repair Center(2020—)

新しいキャンペーンや新技術の開発が続いていく一方で、The North Faceではリペアサービスを長く続けています。ブランド創業当時は「Lifetime Warranty(=生涯保証)」として、一度アイテムを購入した後は、永年保証を付けて販売していた時期もありました。ひとつのものを大切に使い続けるための「リペア」は、大切な価値観。それを改めて世の中に伝えていく、という目的でリペアセンターのプロジェクトが始動しました。The North Faceがやってきた今までのリペアって、修理した箇所がわからないくらいきれいに仕上げることを正解としていたんですよね。もちろんそれは、これまでもこれからもずっと重要なことなのですが、それを踏まえた上で、どうすればブランドらしく、より広くこの取り組みが伝わるか、関わる人たちとディスカッションを重ねました。会話の中で、リペアそのものをカッコいいと感じてもらうこと、また修理したプロダクトに愛着を持ってもらうことをゴールにできれば、と。

店舗で行われたリペアイベントでは、期間限定で修理に使うファスナーや生地などのパーツの色を選んでいただけるサービスを実施。

具体的には、リペアに使用する生地の色や、ファスナーなどのパーツを10色くらいずつ用意して、リペアする部分に対して、イベント中のみ、お客様が好きな組み合わせを選べるようにしたんです。そういう体験サービスを全国のショップを回って実施できるように、普段は家具や店舗内装のデザインなどをされているMOBLEY WORKSの鰤岡さんに依頼して、組み立て可能な移動式のリペアブースを設計・製作していただきました。告知するためのキービジュアルも、愛着を感じてもらえるアイキャッチなものにしたかったので、グラフィックデザイナーの小林一毅さんに、カラフルで幾何学的なグラフィックを作っていただきました。実はこれはThe North Faceのヘリテージプロダクトのパターンを解体・再構築してデザインされたものです。その結果、イベントにご参加いただいたお客様には、カスタマイズをとても楽しんでいただけて、オンラインでも大きな反響がありました。僕が入社して間もなく担当した思い出深い企画だったので、今でもポスターを額装して、家の玄関に飾っています。

グラフィックデザイナーの小林一毅さんによるグラフィックのポスター。幾何学的なパーツの組み合わせはいくつかパターンがあり、WEBではモーショングラフィックとしても展開された。

ブランドアイコンの一つであるヌプシジャケット30周年キャンペーン。
30 YEARS OF NUPTSE JACKET(2022)

今やブランドの中で最もアイコニックなアイテムのひとつになった〈ヌプシジャケット(Nuptse Jacket)〉は、もともと、The North Faceが高所登山向けに開発してきた「エクスペディションシステム」に対応するプロダクトのひとつとして、1992年にデビューしたインナーダウンでした。その後、ヒップホップやストリートシーンでファッションアイテムとしても爆発的なヒットを記録し、ヌプシブーティーやSUPREMEとのコラボレーションアイテムが登場するなど、世界的な盛り上がりを見せた歴史があります。ベストセラーアイテムであるヌプシジャケットが30周年を迎えるタイミングで、何をするべきか。キャンペーンではプロダクトの魅力やヒストリーを伝えることも大切ですし、時代を経てアップデートされたプロダクトをしっかりと販売に繋げるためにも、幅広く模索しながら企画を考えました。

ヌプシジャケットが発売された1992年のThe North Faceシーズンカタログ。

生地に無染色リサイクルポリエステル、中の羽毛にもリサイクルダウンが採用された〈Undyed Nuptse Jacket〉。

普遍的なデザインを踏襲しながら素材をよりサステナブルにアップデートしたものや、染色工程を省いた無染色の白さで新たな価値を提案するもの、カラーやサイズを自分好みにオーダー可能なカスタマイズアイテムなど。30年の年月を経て、ヌプシジャケットはさらに進化しました。そんな中、山から街まで多くの人々に愛されてきたプロダクトの魅力を改めて現代を生きる人たちに伝えたいと考えた時に、ブランドとしては、日本の音楽シーンで強い存在感を放つアーティストにお願いしたいと思ったんです。ちょうどその頃、よく楽曲を聴いていたラッパーのDaichi Yamamotoさんのインタビューを拝見しまして。彼が幼少期からさまざまなカルチャーに触れて育ち、ロンドンへの留学なども含めて困難と対峙しながらも、意欲的に創作を続けてきたことを知りました。一緒に取り組みたい、というこちらからのオファーを快く受けてくださり、会話を重ねる中で、“ヌプシジャケットが歩んできた30年”を彼の過去・現在・未来と重ねながら、素晴らしい楽曲を制作してくれました。2024年にはマウンテンフェスティバルでもライブパフォーマンスを披露していただき、豊かな表現力を持つ現代のエクスプローラーと一緒に取り組みができて、とても貴重な経験となりました。

30周年特設サイトでは、ヌプシジャケットを着こなすDaichi Yamamotoさんのフォトストーリーと、オリジナル楽曲のリリックも掲載された。

自然と共創するアーティストSam Fallsとの出会い。
BREWED PROTEIN™ COLLECTION | SAM FALLS(2024-2025)

2015年頃から、山形県のバイオベンチャー企業であるSpiber(スパイバー)とThe North Faceとの共同開発がスタートしました。Spiber社との取り組みから10年が経とうとする中、環境への負荷が少ない革新的な構造タンパク質素材「Brewed Protein™(ブリュード・プロテイン™)」を我々だけで活用していくのではなく、コラボレーターとともに新たなマーケットへその素材の価値を届けていくアイデアが生まれました。せっかくならファーストシーズンは、The North Faceらしくアメリカにルーツを持つクリエイターが良いと思い、事前にアポイントを入れて、現地で10組くらいのアーティストやクリエイターを訪ねました。その中で出会った一人が、現代美術家のSam Fallsでした。

写真表現をベースに作風を発展させてきた彼の作風は非常に思慮深くユニークです。時間・光・空間といった写真を構成する要素をベースに、自ら自然に入り込み共創することで、作品が生まれる場所と時間のギャップを限りなく埋めています。その場に生息する特有の植物でモチーフを描き、突然の雨も、吹き抜ける風も、動く虫たちも、それらすべてが作用して作品になっていく。過程も含め、自然と共創しながらアート作品を作る姿勢とその文脈性が、今回の企画にふさわしいアーティストだと強く感じました。

Samの友人である写真家のPeter Sutherlandもプロジェクトに参加。完成したコラボレーションTシャツのサンプルを持って、NY郊外にあるSamのアトリエで撮影した1枚。

あとは、彼が子どもの頃からバックカントリースノーボードやサーフィンを続けていて、アウトドアスポーツが大好きなところもThe North Faceと親和性が高いと感じました。キャンペーンでは彼の作品が完成するまでのドキュメントを写真に残したくて、ご本人とのご縁もあり、僕もファンの一人であったPeter Sutherland氏による撮影が叶いました。完成したコラボレーションアイテムをリリースした時は、お客様やメディアからの反響も大きく、Samとのプロジェクトが素晴らしい形で発表できて、個人的にもとても嬉しかったです。SamやPeterと、発売イベントのために北海道・ニセコに旅したことも、とても良い思い出です。

Sam Fallsがアトリエで制作する様子をPeter Sutherlandが撮り下ろしたフォトエッセイ。

原田貴章

ザ・ノース・フェイス マーケティング部 シニアエキスパート クリエイティブディレクション。前職ではイギリスに本社を置く会社でブランドコラボレーションや店舗運営を担当。2019年の入社以来、数々のキャンペーンを手掛ける。ピルスナーやラガーなどの、軽めのビールが好き。