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Explorers

ザ・ノース・フェイス
アパレル事業部
キッズグループ デザイナー

多田有理亜

Yuria Tada

あらゆるものに愛情を持ち
朗らかな笑顔でデザインに向き合う

キッズサイズのトルソーに向かい、にこやかに話しかけるようにサンプルの修正を行う姿が印象的な多田は、80cmから160cmの子ども服のデザインを担当する。デザイナーとして、母として、The North Faceの働きやすさについて教えてくれた。

Work Scope1

子ども服に魅了され、
好きなものを追求し続ける

『ベルサイユのばら』のコーヒースリーブやさくらももこデザインのタンブラー、白鳥モチーフのペン立て。“好き”があふれたデスクで働く多田は、The North Faceがキッズ専門店を原宿にオープンした2014年に入社。「10歳くらいの頃から、母と祖母に服作りを学び始めました。服飾学生時代には子ども服に魅了されて、以来ずっと子ども服を作り続けています」。服のスケッチは主にPC上で行う。生地サンプルの写真素材を使ってデザインを進めた方が、より具体的な絵に近づけるのだとか。入社当初はデザイナーの多田とMD、アシスタントの少人数だったキッズグループも、この10年でメンバーは倍以上になり、女性スタッフや男女問わず子育て世代のスタッフがぐっと増えた。男性の育休取得率も高くなり、より働きやすい環境になったという。「グループのメンバーはすべてが子育て中なわけではありません。だからこそ考えが凝り固まらず、いいバランスなんです」

キッズサイズのトルソーを使ってのデザイン作業。白鳥モチーフのペン立てがお尻を向けているときは多田が出社中のサイン。

Work Scope2

妥協のない働き方を、
信頼できるチームとともに

多田が愛情を持って描いたデザインを、社内のパタンナーが具現化していく。「パタンナーのシュウさんはキッズグループに異動してまだ1年ほどですが、いろんなアイデアをくださって、とても仕事がやりやすく信頼しています。シュウさんもお子さんがいるので、試作を家でテストしてきてくれたりもします。キッズグループでは、富山の事務所の方々とも常にチームを組んで仕事を進めているのですが、みなさんとても優秀で本当に尊敬しています」。ちなみに、多田の夫は年間100日超で海外を飛び回るジェットセッター。「夫が不在の日も多いのですが、会社では私の家庭の予定を加味してスケジュールを組んでくれるので助かっています。数年前から、出張はせずにリモートでの打ち合わせもできるようになったのですが、やっぱり実物を見ながら直接パタンナーさんと顔を合わせて話をしたくて。自分で富山まで足を運べるのがありがたいです。母だからと、自分の仕事を諦めることが少ない職場だと思います」

パタンナーとトワルチェック。襟ぐりの構造について細かく話し合う。

Work Scope3

ひとつひとつにストーリーがある、
使い古された服に再び会える幸せ

The North Faceも取り組んでいるゴールドウインのキッズプロジェクト「グリーンバトン」は、サイズアウトした子ども服をお客様から買い取り、クリーニング、リペア、アップサイクル(リメイク)して再度販売する取り組み。「預かった服を見てみると、子どもたちがThe North Faceの服を泥だらけになるまで着て遊んでいたのがわかって嬉しいですね。随分と前にデザインした服がまた手もとに戻ってくることもあるんです」。子ども服について語る多田の表情は、とても温かく大きな愛情を秘めている。「特定の箇所だけ汚れていたり擦り切れたりしている服もあれば、記名されているものも、中にはリペアされた服もあって。大切に使ってくれていたんだけど、ついにサイズアウトしちゃったんだな、などとひとつひとつに物語を感じて愛しい。それらに新たに手を加えてまた販売するという、本当に幸せで大好きな仕事です」

富山の工場では、子どもたちが「グリーンバトン」を取材する取り組みも。汚れた部分にパッチワークをほどこし再販売するアップサイクルのプロダクト。

Personal Life1

娘の服を手作りすることも。
服作りを通して好奇心は未知数

子ども服に多大なる愛を注ぐ多田の娘は現在6歳。彼女の服も手作りすることが多いのだとか。「古着屋を経営する夫が買い付けてきた大人用のコートをキッズ用にするなどのリメイクをすることもあります。もちろん強制はしませんが、気に入って着てもらえたら嬉しい。可愛い系の服が好きなので、ピンクの布を使ったりしています(笑)」。服にまつわる知識は積極的に集めているそう。「社内にはたくさんのプロフェッショナルがいるので、子ども服に使わないような素材のことも、質問をすれば事細かに答えを返してもらえるのがこの会社の面白いところ。それに、他社では行けないような工場見学もできて本当に楽しい。子ども服にはなかなか使いづらそうな新素材でも、知識を付けておくと数年後に芽を出すこともあるんです」

コートは古着のリメイク。シルバーのもこもこパンツはイチから手作りした。オンラインストアの箱を使って簡易的な機織り機を製作し、娘に布ができる過程を共有したそう。

Personal Life2

興味や趣味が、デザインに
インスピレーションを与えてくれる

映画・アニメ観賞や絵本の収集、バレエ鑑賞など、文化的な趣味を持つ多田だが、娘と過ごす休日は、彼女と一緒に楽しめることがいちばんのテーマ。「私の趣味でも、観てくれそうな映画は娘と一緒に行きます。大好きな『ベルサイユのばら』は娘にも楽しんでもらえて嬉しかったです」。趣味はデザインの着想源になることも。「2025年春のベビー服は柄物をたくさん作りました。その中には、大切にしている絵本からデザインのイメージが広がったものもあります」。Mats Ekが振り付けをした『カルメン』を鑑賞して以来、バレエ鑑賞も大切な趣味のひとつとなった。「伝統を踏襲しつつ新たな表現を追求するバレエの世界は、デザイナーとして学ぶものが多いです」。家族とは、“やったことのないことをやってみる”ことを意識し続けているそう。「通ったことのない道を通ってみるなど、小さなことでもいいんです。これからも家族で新しい発見をたくさんしていきたいです」

娘とはバレエ鑑賞も楽しむ。長年コレクションしているのは、エロール・ル・カインの絵本。

MY TNF PRODUCT

Glam Backpack

「入社当時、The North Faceの服は数着しか持っていなくて、会社のイベントに参加するときは、チームの人に貸してもらっていました(笑)。同僚や友達に誘ってもらって、山やキャンプに行くたびに少しずつギアも集めていき、今では『Fieludens』のキャンプグッズをひと通り揃えて愛用しています」と、好きなものを突き詰める性格の多田らしいエピソードも。「そうだ、いちばん身近にあったからこそ忘れていました」と取り出したのは、すでに廃盤となった〈Glam Backpack〉。「とっても軽いし、3つの大きなメッシュのポケットが可愛くて。お気に入りで長年使っているので裏は少し加水分解してきてしまいましたが、まだまだ愛用していきます!」