山小屋に惹かれて
北八ヶ岳の森に向かった
次の休暇は北八ヶ岳を歩こうと決めていた。以前から泊まってみたい山小屋があったのだ。森に囲まれた池の畔に佇み、三角屋根の煙突から静かに煙を立ちのぼらせている。その姿は誰もが思い浮かべる絵に描いたような山小屋。それが北八ヶ岳のしらびそ小屋だ。小屋まではゆっくり歩いて1時間半から2時間の距離。翌日は稜線まで登りたいから8時間を越えるはず。1泊2日の行程としては少々バランスが悪いが、そんな登山があってもいいだろう。こうして僕は新しいOuranosに荷物を詰めて、北八ヶ岳の森に向かった。

いつもよりゆっくり歩けば
思いがけない景色にも出会える
まばゆい木漏れ日に、澄み切った空気、梢を揺らす風の音……。靴ヒモを結んで立ち上がると、街から山へとスイッチが切り替わった。Ouranosを背負い、ヒップベルトのバックルを留めてひと呼吸。そうして僕は歩き始めた。今日の目的地までは2時間もかからないから、山慣れた人にはもの足りないかもしれない。それでも急ぐことなく歩みを進めている。余裕がある日だからこそ、山をゆっくり歩きたい。そうすれば、何気ない樹林帯すらいつもと違って見えるはずだ。山道は緩やかな傾斜に沿ってしばらく進み、そこからつづら折りの急登。あとひと踏ん張りと息を切らして登り詰めると、突如、道は平坦になった。池のほとりの山小屋はもうすぐそこだ。